(プロローグー2)「防災・減災」を文化的発想でとらえてみる

 前回の記事では、「災害」を社会学という観点で捉えていく話をしました。今回はもう一歩突っ込んでいきたいと思います。「防災・減災」を文化的な観点でとらえてみる、ということです。「災害」が発生するので「防災・減災」という発想が生まれます。
 そもそも「災害」とは自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態を指す、とウィキペディアにもあるように、「人命や社会生活に被害が生じる事態」なので、我々の身の回りに関わるから「災害」であり、「災害の多い日本」は未然に防ぐために様々な準備「防災・減災」への取り組みを行います。その情報が多く、さまざまな角度から工夫されていくこと、定義を決めることは文化だと私は思います。
 ここからは、山下祐介氏「リスク・コミュニティ論」(※1)を引用していきたいと思います。
この書籍は、地域コミュニティと災害の関係性を述べたとても有意義な論文です。コミュニティとの関わりや日本人としての生業といった歴史的観点から描かれています。
 2万年以上前になる旧石器時代が日本には存在していたことが岩宿で関東ローム層の中から発見された石器から示され、その後の縄文時代は縄文土器の発掘で判明しているが、紀元前3500年前から、紀元前2000年辺りでは、すでに大規模集落が成立しており、集住・共同・分業が始まっているといいます。
 日本は気象風土に適合した稲作・水田により農耕文化といわれていますが、これが人間社会の環境との切り結びのあり方を大きく変え、あるいは形成したということになります。
 長く続く荘園制度や幕藩体制、江戸時代の村社会(五人組)は、その後の町内会に大きな影響を与え、日本の社会づくりに大きく寄与しているといえます。
 しばしば町内会が政治に口出ししないことの不思議な組織であるという議論を見聞きしますが、おそらく元々は五人組の影響で、政治参加はしないという制度(※2)だったからではないかと思います(これは私見)。
 「災害時」は、”被害抑止””被害軽減””応急対応””復旧・復興”の減災サイクルを「人と防災未来センター」(※3)では発信してますが、この”復旧・復興”には共同防衛機能の回復が大きく関わる、すなわち、地域コミュニティの関わりが大きく関与するということになります。
 昨今、町内会を中心とした地域との関わりが希薄になっており、課題として挙げられています。また、「公助」というべく、行政・自治体機関による市町民・住民へのフォローも限られており、災害時に共同防衛機能は働くのか、ということも疑問視されていると思っています。
 そのため、地域コミュニティ研究という観点で進めていきますが、仮説として記載しておこうと思います。

 町内会のような機能が低下している中、共同防衛機能はそもそも回復しやすいか?

 私は回復しやすいと思っています。いや、回復するためには”これまでとは違ったアクションが必要だ”という一文を付けて、ですが。
 日本人は、地理や歴史上、農耕社会あるいは村社会といった集住・共同するという考えをもっていること。このベースは大きいと思います。そこに現代社会におけるコミュニケーション手法である人と人の関わり方やIT・AIの利活用という新しい分野を取り入れ認め合いポジティブに考える必要があると思っています。例えば、いかに「防災・減災」を、平時からボランタリーアソシエーションのような組織体や企業、行政・自治体が連携をしながら啓発をし、地域を巻き込み、その中には新しい技術が融合されている、ということでかなり補完できるのではないかと思っているのです。
 この仮説を元に、「防災・減災」を文化的な発想で進めていきたいのです。



(※1)リスク・コミュニティ論【環境社会史序説】/山下祐介著/弘文堂
(※2)五人組はどんな制度だったの?/学研教育情報資料センター
https://kids.gakken.co.jp/box/syakai/06/pdf/B026110130.pdf

(※3)人と防災未来センターボランティアコーディネーターコース企画委員会資料より/(論文)災害をめぐる新たな想像力ー社会の「復元=回復力」をめぐってー/浦野正樹

♧人と防災未来センターHP
https://www.dri.ne.jp/

地域づくり研究会・ローカルズナレッジ

The "Locals Knowledge And Laboratory" edites it about locals, local attractive point, regional activation of Japan and posts it. 地域づくり研究会・ローカルズナレッジ “地域資源”が”地域価値”となるような モノコトを探索します。